XHL(EXTREME ICE HOCKEY LEAGUE)セカンドシーズンから新規参入する北海道グルス。ホームタウンの釧路に、ついにアイスホッケーチームが戻ってきます。9月26日のホーム開幕戦に向けてチーム作りを進める小林弘明監督に、いまの手応えと、このチームで目指すものをうかがいました。
「釧路だけでは難しかった。他の地区から『ぜひやりたい』と集まってくれた」
――XHL参戦が決まり、開幕が近づいてきました。いまはどんな心境でいらっしゃいますか?
しっかりとメンバーが北海道グルスの旗のもと、集まってくれました。そこは(北海道グルス)原代表が頑張ってくれました。そういう面で、感謝もしていますし楽しみですね。ありきたりの答えですけど、本当にリーグが始まるのが楽しみだ、と思っています。
――メンバーを拝見すると、釧路の選手はもちろん、北海道全域からいろいろな選手が集まったチームですね。
そうですね。やはり釧路だけだと、正直、(メンバー集めに)難しいところがあったのは確かです。釧路には「釧路の芯」もありますけれど、いきなりと言ったらあれですが、今シーズン前に関しては結構、急な感じで集めた部分も否めなかったので。その点では難しかったのかなとは思いますけど。
そういう面で、北海道の他地区からも釧路出身者や釧路にルーツのある選手が「ぜひやりたい」と手をあげて選手が集まってくれた。それはありがたかったですね。
「釧路でホッケーが80年ぐらい続いている。その流れを、また戻したい」

――十数年ぶりに、釧路にチームができました。これは釧路にとって大きな意味があるのではないかと思うのですが、監督はどうお考えですか。
僕が思っているのは、釧路ではアイスホッケーが、多分80年ぐらい続いているんですよね。その歴史をもう一回振り返るのには——ホッケーに関わっている人は、その歴史を振り返る必要が必ずあると僕は思っているので。そこをつないでいくチーム「北海道グルス」ができたということは、すごくありがたいです。
なぜここにホッケーチームがあるのか。それを昔から伝えていけるような環境になればいいなとは思います。もう一度、釧路にはどうしてホッケーがあるのかというのを考え直すのも、いいのかなと思っています。
いま釧路は、クレインズが無くなってからは、選手を経験したことのある指導者がもう減ってしまっているんです。経験したらいいという話ではないですけれども…、我々もそうですが、釧路の先輩OBの方々に教えてもらって、今がある。その教えてもらった方も、さらに昔の方から教えてもらって……、とそういう歴史が続いていくなかで、氷都・釧路と呼ばれてきた。
そこをまたつなぐ、というんですか。また、その流れを戻したいと思っているんです。
いまは親御さんがコーチをやっていることが多いんですけれど、その方たちには「全然、グルスの練習に乗りたかったら乗りに来ていいですよ」という話をしているんです。コーチとして経験してみたいというのは、全然、乗ってもらってもいいので。ちょっと今までとは違う形でホッケーに触れ合ってもらえれば、面白いのかなと。そういうのは、意識してやっていますね。
――XHLというリーグを選ばれた理由を教えてください
もともとNPO法人として、アジアリーグという話も、1年以上ぐらい前からいただいてはいたんです。ただ、あのリーグはやっぱり経済的な面がかなり難しいので。そう考えると、なかなか一歩踏み込むところまでは行かなかった。
ちょうどその頃、XHLが始まるという話は聞いていたので、見てみたいというのはあったんです。その趣旨も、ホッケーの普及とか、やる環境——長く続けられる環境という話があったので。いいなあというのがあって、実際に見に行きましたし、各チームの代表とも少し会うことがあったので、話しました。
熱意もあるし、「我々で作っていこう」という気持ちもすごく感じたので。これだったら釧路でも、ぜひやってもいいんじゃないかという気持ちになって。それで代表と話しながら、参戦が決まったという流れです。すでにできているものに参加しているわけではなくて、参加しながらみんなで作っていく。そういう感じの話をされていたので、そこがすごく魅力かなと思うんですよね。
我々が北海道でまず手を挙げることで、たとえば苫小牧とか、そういうところも参加してくる可能性が出てくるし。東北の八戸とか、ああいうところでも芽が出てくる可能性がある。関西の方でもいくつか参戦を検討しているところはあるようですね。そうなるとXHLが全国区になるのかな、という期待はあります。
「受けて立つような気持ちは、全くない」

――選手も集まって、どんな方向性のチームにしていきたいとお考えですか?
まず単純に、いきなりXHLに入って、我々が例えば優勝するようなリーグだったら、全く面白くないと思うんですよね。やっぱり東京ワイルズとか、名古屋オルクスとか、滋賀ブルーライズIHCとかオリジナル3のチームに対して、我々が挑戦していくという形なので。
そこにどれだけ自分たちの力が通用するかというのを試しに行けるようなチームを作っていきます。受けて立つような気持ちは、全くありません。
接戦で勝てれば、もちろんいいですし。負けるにしても、その負けっぷりがどんな内容かによって、やっぱり評価も変わると思うので。そういうところが見ている方々、ファンの方々にちゃんと伝わるようなチームができればいいかな、と思っています。
――守備的なチーム、攻撃的なチーム、どちらを志向されていますか?
こう言ってしまうと冷静すぎるとも言われてしまうかもしれませんが、守る時間は長いと正直予想しています。東京ワイルズさんなども今年かなりの補強をしていますし、6割、7割ぐらいは攻められている時間があるのかなと考えています。
まあ、全体的には少ないチャンスになるかもしれませんが、その攻撃でしっかり相手のゴールまで向かっていける状態を作って、しっかりシュートまで行く。その1回のチャンスを、しっかり人数をかけて厚く攻められるように。そういうことは、いま選手には伝えていますし、そういう練習もやっています。
――選手たちの様子はいかがですか?
物凄く情熱がありますね。それは間違いないです。

6月に一度、顔合わせをしたんですけれど、その時のちょっとした練習では、もっと、いいところを見せようと思って、失敗しないようにやるのかなと思っていたんです。パスとかも失敗しないように。ところが、しっかり強いパスでつなぐ。パスが緩くなると相手に取られてしまうんですけれど、それがなかった。結構びっくりして、「おお、かなりやる気があるな」というのは感じましたね。
思っていたよりも全然スキルも高い選手が揃いましたし、一度ちゃんと練習すれば覚えるホッケーIQも兼ね備えています。やはりみんな、北海道の中でやってきた、揉まれてきた選手だなというのは、すごく感じます。
練習は、リンクがしっかり取れても、全員が集まることはなかなか難しいので、9月の開幕までに毎週来れる選手が集まって、そこで集中してトレーニングしています。ただ、1時間半とかの練習でも、かなりへとへとになってやっています。集中して、スピードが落ちない中での練習なので密度はなかなかだと思います。そこはみんな、張り切って取り組んでくれている、と思います。
選手たちには、こういう話もしているんです。インスタグラムなどのコメントで、みんな「全力で頑張ります」「全力を尽くします」と書いてくれるんですけれども。「君たちの全力を出したぐらいでは勝てないよ」という話は、いつもしていて。「みんなでレベルを、もう一つ引き上げよう」と発破をかけています。そこはみんな意識して練習から取り組んでやってくれています。もちろん失敗もありますけど、失敗した後のプレーをものすごく見ているので、そこも選手は挑戦の気持ちを持って取り組み、レベルアップを目指してくれています。
――監督から、注目してほしい選手を挙げていただけますか。
まずキーパーですね。加藤(陸)は練習も結構してくれていますし、そこは要となるので。最初に抑えるにはやっぱりキーパーなので、まず加藤は間違いないですね。初年度キャプテンとしてうってつけの人物だと思っています。これは僕だけではなく、原代表の意見なんですけれど。
加藤(陸)は中学生の頃しか見ていなかったのですが、その中で成長して、しっかり物を喋るなと思いました。練習でも「パスが悪い」「シュートが入らない」というのをしっかり口に出して、声をかけている。釧路で高校生の練習にも積極的に参加してくれていますし、キャプテンとしてチームをまとめようとしている感じは伝わりますね。キーパーだからどう、という感じではなく、一キャプテンとしての目線でチームを見てくれているなと思います。
クレインズで活躍した荒木(翔伍)も体がしっかりできているので、感触さえ戻れば活躍してくれるのかなと思います。触ったらがっちりしていて、しっかりとトレーニングをしてきたんだなと。
ディフェンスでは葛西(純昌)ですね。アジアリーグの練習に参加していたというのは、やっぱり結構違うので、そこもすごく期待します。
それから石崎(湧一)。31、2くらいですけれど、結構こちらに質問もしてきますし、パックのスピードもある。周りの選手と息が合えば、というところは期待しています。
矢野(天衣朗)は、僕が旭川医科大学のコーチをやっている縁もあって来てくれました。思ったよりサイズもありますし、こういう選手がチャレンジする場がXHLなのかなと思っていたので。お兄さん2人もホッケーをやっていて、本人からも「ぜひ参戦させてください」という連絡が来て。そういう選手が出てくると、こういう場所がXHLなんだという認識が広がって、みんな入りやすくなる。ゼロからスタートする我々としては、いいチャレンジだと思います。
――開幕2連戦は昨シーズンの王者・東京ワイルズとの対戦となります

正直に話すと、そこには全く意識はないです。ワイルズと戦うためにチームを作ったわけじゃないので、というのが僕の考えですね。
もっと10年後、20年後に、釧路でアイスホッケーが続いていくことを意識して取り組んでいます。今後、グルスの選手が指導者になっていったりとか。釧路の高校生が地元に就職した時に、そこでホッケーを続けられる環境があるとか。そう言った先々のことも目指して北海道グルスというチームを作っているので、ぜひファンの方もともに釧路のアイスホッケーを盛り上げていただければと思います。
記事のキャッチとして「ワイルズには負けません!」とお話しするのが一番いいんでしょうけれども、僕個人的には、全くそういう意識はないです。
もちろん、最初から負けるつもりで話はしていません。この試合も、当たり前だけど勝ちにいくのは当たり前なんです。ただ、そこだけを見てはいない、ということですね。
昔を振り返れば、僕が小学校でホッケーを始めた頃、釧路のチームは弱かったんです。それでも「必ず自分が入って優勝する」という夢を持っていました。20年くらい経って、その夢は叶ったので。
やっぱり、常にその時代のストーリーがあればいいと思うんです。いまはゼロから立ち上げているというのが、一番の始まりなので。北海道グルスの新たなストーリーに注目いただければと思います。
――最後に、ファンの皆さんへメッセージをお願いします。

僕は、見ることよりも自分がプレーしたり指導したりすることが好きなのですが、多分、アイスホッケーは地上で一番速いスポーツだと思うんです。そこは間違いなく一番のこの競技の魅力です。
あとはスケートリンクという環境だと、音も激しいですし。そういうのが体感できるのは、いいなあと思います。高いレベルのプレーは、やっぱり楽しいですし、音も激しいし、スピードもあるし、すごいなあと思って私も見ています。アイスホッケーを見たことがない人は、本当にそういう気持ちになるんだろうなと思います。ぜひ、お友達を連れて、この迫力をスケートリンクでまずは体感いただければと思います。
監督として、まずは、この1年を大事にやっていきます。なんとしても1年間しっかりやって、来年につながるように。原代表と話しあいながら、常に前進する気持ちで取り組んでいきたいと思います。
さあ、釧路に、アイスホッケーが帰ってくる。北海道グルスのホーム開幕戦を、ぜひリンクで。
【北海道グルス ホーム開幕戦】
2026年9月26日(土)16:00 FaceOff
北海道グルス vs 東京ワイルズ @ユタカアイスアリーナ くしろ
9月27日(日)13:00 FaceOff
北海道グルス vs 東京ワイルズ @ユタカアイスアリーナ くしろ
チケット購入: https://w.pia.jp/t/grus/
全試合日程: https://xhl.jp/games/
取材・構成/XHL広報チーム